2008年1月3日
北沢洋子
昨年7月、環境NGOの「石油変革インターナショナル」の提案で、先進国政府と世銀に対して、国際石油会社の投資を助成につながる開発援助や融資を止めように要求する署名運動が行われた。
これには多くの環境団体、国際金融機関に対するアドボカシイNGOなどが多数賛同した。
途上国の貧困根絶に使われるはずのODAや世銀融資は、しばしば、国際石油会社の助成金に化けている。これは、貧しい国では紛争の激化や貧困の増大をもたらし、石油に対する依存度を悪化させ、さらには、地球温暖化をもたらしている。
2003年末、世銀自身が行った「地下資源開発産業調査報告」によると、石油への援助を止めるべきだと結論づけ、「世銀グループは2008年までに石油生産への投資を止めるべきであり、再生可能な資源の開発にシフトすべきである」と勧告した。
残念ながら、世銀はこの勧告を無視し、相変わらず、公的資金を石油会社への助成金として融資し続けている。
1992年以来、世銀グループは石油開発プロジェクトに50億ドルを支出してきた。一方、クリーンな再生可能なエネルギー資源への融資はほんのわずかである。さらに、世銀が石油部門のプロジェクトに融資した中で80%もが、先進国への輸出向けであった。
これらのプロジェクトはエネルギーの貧困の改善につながらず、むしろ石油会社の「法人福祉」ともいえるもので、さらに先進国の石油中毒を進行させている。
先進国の輸出保険庁もまた、石油・ガス資源の開発とパイプライン建設に何十億ドルもの資金を注ぎ込んでいる。1995年以来、Exxon Mobil1社で、10億ドル以上の輸出保険を受けている。シェル、ハリバートン、BPシェブロン、Total、Repsolなどの石油会社は何億ドルもの政府輸出保険を受けている。公的輸出保険とは、民間会社が途上国に輸出、あるいは投資する場合、政府の輸出保険庁の輸出保険に入り、即座に資金を回収する。一方途上国政府は、民間会社は先進国の輸出保険庁に対する債務となる。
石油会社はこのような「石油援助」から恩恵を受けている一方、歴史的な利潤を上げている。
多くの調査が明らかにしているように、途上国での石油開発は貧しい人びとの開発に役立っていない、紛争を激化させ、途上国の石油輸出国の貧困と格差を深化させている。石油依存を続けることは、石油価格の高騰とともに、貧しい国に考えられないほどの影響を与えている。それによって、債務帳消しの効果を無にしてしまう。
輸出保険に関しては、OECD加盟国の間で、貧しい国には掛けないという約束がある。しかし、昨年11月にOECDが発表した報告書によれば、2001~2006年、IDAオンリーの国に対して86億ドル、HIPCs国に対しては35億ドルの輸出保険を掛けた。この報告書は、輸出保険を掛けられた側の国別、部門別の統計はあるが、肝心の掛けた側、すなわちOECDの国別統計は記されていない。
どの部門に輸出保険が掛けられているか。第1はIDAオンリーとHIPCsともに航空機部門で、25億ドルに上っている。続いて、電話通信機、建設、石油・ガス、上下水道、セメント、石膏、水力発電機などとなっている。
オランダのNGO「Both Ends」の調査によれば、途上国の債務の30~40%は、失敗した品目に対する輸出保険となっている。しかし、今回のOECDの発表には、この失敗した品目は記載されていない。
OECDは、輸出保険についての持続可能な開発、企業の社会的責任、腐敗、持続可能な債務などの環境・社会基準を決め、それを監視する「輸出保険作業委員会(ECG)」をOECD内に設立した。
しかし昨年夏、ドイツ、オーストリア、スイスがトルコのIlisuダムプロジェクトに対して掛けた輸出保険は、これら基準に違反している。OECD事務局とECGに対してNGOが対話を持ったか、合意に達せず、NGOは抗議の意志を表して退場するという事件があった。
EUと米国で、輸出保険を監視する国際的なNGO「ECA-Watch」が結成されている。