2012年3月9日
北沢洋子

  英国の「ジュビリー債務キャンペーン(JDC)」が「英国輸出保険保証省(ECGD)」に対してキャンペーンを開始して以来、6ヵ月が過ぎた。これまでのところ、途上国に対するECGDにある債務は、英国の武器輸出や、でたらめな輸出によって作り出された債務であることが判明した。
  ODAや世銀の融資の場合は、情報がある程度、公開されているが、輸出保険の場合は民間企業の商行為になっているため、議会に対する定期的な報告もなく、実態がつかめ難い。通常、民間企業が、途上国にモノを売る際、政府の輸出保険を掛ける。企業としては、途上国政府から回収するのではなく、自国政府の保険から取り立てればよいので、兵器など、高額の輸出品目に掛ける。
  英国のJDCは、昨年、議員たちを巻き込んで、ECGDの情報公開をキャンペーンした。その結果、ECGDは、11年7月の段階で、途上国24カ国、総額24億ポンドの債務を保有していることが判明した。この額は、途上国の債務総額の90%にのぼる。

スーダン:  6億5,000万ポンド・ヌメイリ軍事独裁
インドネシア:4億5,000万ポンド・スハルト軍事独裁
エジプト:  1億ドル       ・ムバラク独裁
イラク:   2億9,000万ポンド・フセイン独裁

  途上国では、輸出保険を掛けた輸出品目の詳細を知らされていない。なぜならば、その殆どが独裁政権時代で武器輸出品目である。わずかに明らかになったのは、1990年代、スハルト政権が英国からホーキ・ジェット戦闘機を買ったことは、当時、議論になったので、知られている。
スーダンはECGDの最大のクライアントである。11年1月、労働党のLisa nandy 議員の質問に対して、保守党のMark Prisk 商務長官は、「スーダンの輸出品目について、ECGDは記録を持っていない」と答えた。この輸出保険は1985年3月までのヌメイリ政権時代に行なわれたことは確かである。一方、自由民主党のEd Devey 通商長官になると「スーダンに対する輸出保険は430件のファイルがあるが、詳細については、公開できない。なぜなら調査には膨大な時間と費用がかかるからだ」と答えている。
JDCが独自に1984年以降のスーダンの債務を情報公開法(FoI)に基づいて、調べたところ、債務の利子は10~12%にのぼっていることがわかった。これは、異常に高い。1985年当時の債務総額は5,500万ポンドであった。つまり今日の6億5,000万ドルという債務の中の90%は、利子と罰金である。

  日本は、2000年4月、輸出保険による重債務貧困国(HIPCs)の債務を帳消しにした、輸出保険は外務省や財務省ではなく、経済産業省の管轄であり、税金から支払われている。