2012年10月7日
北沢洋子
最貧国の公的債務を帳消しにする「ジュビリー2000」の国際キャンペーンから12年経った。これは成功した。しかし、現在、途上国は、持続可能でない民間債務の重圧に苦しんでいる。これは、急速に増大している。
債務帳消しとグローバルな金融市場の透明性をキャンペーンしている英国のJubilee Debt Campaign の報告書によると、最貧国では、民間セクターの債務の返済は、2000年には輸出額の4%であったが、2010年には10%に増えた、という。
エチオピア、ニジェール、モザンビークなどの最貧国は、債務帳消しが実施された2000年以前に等しい債務の返済を行っている。エルサルバドル、フィリピン、スリランカなど最貧国の民間セクターが支払っている債務返済額は、政府の税収の4分の1を占めている。民間セクターの債務返済額は、公的セクターの2倍である。
一般的にいうと、公的債務は、債務帳消しキャンペーンと、経済の見通しが良くなったことで,減っている。しかし、多くの途上国で、民間セクター債務が危険水準に達している。これは、開発の足を引っ張っている。民間セクターの債務が増えていることの原因は、グローバルな金融システムの自由化にあると言えよう。
2000年、32カ国の「最貧国の公的債務(HIPCs)」に対して、1,250億ドルの帳消しが行われた。IMF・世銀は、将来数年間に、最貧国(LDCs)は、現在の債務返済額に比べて、3分の1増えると予測している。これは、ヨーロッパにも当てはまる。
今日、ギリシャで起こっていることは、すでに途上国で起こったことと同じだ。歴史は繰り返す。そこでは、貸し手(銀行)は無責任に貸し、借り手(途上国)はその後始末をしなければならない。
最初、債務危機は、1982年8月、メキシコで始まり、1990年代途上国に蔓延した。続いて、1997年東アジアが見舞われ、続いて、ロシア、ブラジル、トルコ、アルゼンチンと続いた。これらは、民間セクターが過度に借りた結果という点について、共通している。
ブラジルなどいくらかの国は、短期の外国資本の移動を規制し始めた。
2008年、アイスランドでは、大銀行の債務がGDPの6倍になった。銀行制度の崩壊であった。政府は、人びとが反対したため、民間セクターの債務の返済を拒否した。その結果、アイスランドは他の国に比べて、経済の回復は早かった。
多くの国で、資本が国境を超えて自由に出入りするのを規制を始めたが、しかし、これに対して、WTOなどの協定が、妨げになっている。
ジュビリーの帳消しによって、1998年には、債務返済額が税収の20%であったが、2010年には5%に減った。その結果、子どもの小学校の就学率は、10年間で、63%から83%に増えた。