2012年10月8日
北沢洋子

 1983年に始まったスリランカの内戦は、4半世紀に亘った。2009年、反乱派「タミールイーラム解放のトラ(LTTE)」に対して政府軍が武力で敗退させて終わった。それゆえ、スリランカは最新のポスト内戦国として、債務の帳消し、開発援助など国際社会の援助の手が差し伸べられる筈だ。
  しかし、スリランカの場合は違う。スリランカの対外債務は、2000年~2012年間に2倍になった。債務総額は180億ドル(2兆3,750LKR)である。これを経済の規模に対する比率を見ると、スリランカの2011年のGDPは、600億ドルであった。
  外国からの借り入れが増えるにつれて、当然のことながら債務の返済額も増える。2011年の返済額は、年間10億ドルに上った。これは、スリランカに流入した外国直接投資額に等しい。
  しかも、最近の借り入れ分の利子は、市場並みか、あるいは高い。さらに返済猶予期間も短くなっている。
  中国が日本を抜いて、現在2国間ではスリランカの最大の融資国である。1997年以後、スリランカが中国から借りた額はネットで29億9,600万ドルであった。これに、利子が加わり、総額49億ドルに上る。これを1997年、借り入れ始まった時点から12年間にわたって、毎年返済しなければならない。中国は1970年からスリランカを援助してきたが、当時は融資ではなく贈与であった。しかし、2006年、Mahinda Rajapakseが大統領に就任すると、Colombo-Katunayake間ハイウエイ、Magumpura港、Mattals国際空港、Norochcholai火力発電所など巨大なインフラストラクチャーの建設プロジェクトに、中国が主な融資国となった。
  もう1つのインフラへの国際融資機関は、アジア開発銀行(ADB)である。これまでにADBはスリランカに3兆3530億ドルを融資した。それに支払った利子分を加えると、融資総額は4兆6,420億ドルに上る。
  第3位は、国際金融市場である。これは、スリランカ政府が巨大インフラ・プロジェクトをまかなうために発行した国債を買っている。スリランカ政府は、期日が来ると、利子を含めて、買い戻さねばならない。2007年以来、5種の国債、40億ドルを発行した。最近の発行分は、今年7月であった。スリランカの国債は、金融市場よりも利子が高いので、人気が高い。
  政府が発行した国債の資金は、追加のインフラ建設プロジェクトの費用に使われたが、一方では、以前のローンの返済にも充てられた。つまりスリランカ政府は、古いローンを支払うために新しいローンを借りている。スリランカ政府は、IMFから、2009年にスタンバイ融資に合意した26億ドルの最後の分の支払いを受けた。通常IMFは約束した融資を2~3年間に時間をおいて一定の額を、融資を受けた国がIMFの条件を実施したのを確かめてから支払う。そこで、スリランカ政府はIMFから借りた以前の債務返済をしないで、新たに5億ドルの融資の交渉を始めた。一方世銀がスリランカに、これから4年間に20億ドルを融資することになっている。
  IMFの「条件」にしたがって、2011年11月に、スリランカ政府は通貨のルピーを16%切り下げた。その結果、ガソリン、灯油、電気代が高騰した。これは新自由主義政策に沿ったものである。IMFは、スリランカの今年のインフレ率が9.5%上昇すると推測している。スリランカの輸出額は減り、輸入額は増えた。
  このような危険な状況を知りながら、IMFは、「正しい政策が執行され、経済のファンダメンタルスは持続して、健全だ。」と嘯いている。