2012年10月12日
北沢洋子
世銀グループの中に途上国に投資する民間企業に融資する「国際金融公社(IFC)」がある。最近、IFCは、途上国で紛争となっている民間企業のプロジェクトに融資をしていることが問題となっている。
1.南アフリカのプラチナ鉱山に対するIFCの融資
今年8月、南アフリカのMarikanaプラチナ鉱山で、激しいストが起こった。この鉱山は、ロンドンに本拠を置くLonmin社が開発した。そして、2007年にIFCから1億ドルの開発融資と、5,000万ドルの資本参加を受けた。
この鉱山では、昨年来、鉱山労働者が賃上げと労働条件の改善を要求してストを始めた。そして、今年8月半ばには、警察の弾圧が始まり、40人の労働者が射殺された。
事件の直後、IFCは「事件は深刻であり、IFCとしては、建設的な対話と交渉を通じて解決されることを望む」という声明を出した。これには、会社が労働協約を守らないことには全く触れていない。
南アフリカの「人権委員会」は、このMarikanaの虐殺事件を調査し、「Lonmin社は、2007年にIFCの融資を受けた際、現地のコミュニティを発展するという協定を結んだが、これは実行されなかった」という結論を出した。
ヨハネスブルグにあるBen Marks財団は、その報告書の中で、「労働者の安全、スト労働者にたいする脅迫、コミュニティ開発計画を実行しなかったこと、そして農地の強制収用などが起こっている」と指摘した。
また同財団は、「環境は5年前より悪くなっている」と述べている。とくにスト中の労働者は劣悪な生活環境に怒っている。たとえば、下水設備が壊れたままで放置され、3ヵ所で汚水が川にたれ流されている。その結果、子どもたちが慢性疾患に苦しめられている。住民は、過去5年間、会社側に抗議してきたが、改善されなかった。
2.ペルーの鉱山スト
同じような労使紛争がペルーで起こっている。米系のNewmont鉱山会社が、Yanacocha金鉱開発を行った。これにIFCは5%の資本参加をしている。今年7月、この金鉱で労働者の抗議活動が起こり、これを警察が弾圧したため、5人の労働者が死亡した。また、今年8月には、Cajamarca州のCongas金鉱開発に対して、住民の78%が反対して、立ち上がった。1999年、IFCは、ペルーの金鉱に対して20%の資本提携をした。ペルーの金鉱では、水の汚染が、住民の健康や、農業に被害をもたらしている。
2011年11月、IFCはQuellaveco金鉱に20%の資本参加をした。IFCは「Comliance Advisor/Ombudsumann (CAO)」というメカニズムがあるのにもかかわらず、土地所有者の同意なしに土地接収するという重大なCAO違反を起こっている。
3.インドのダム建設について
8月はじめ、インドのウッタルカンド州のVishnugad Pipalkoti 水力発電プロジェクトに、世銀が融資することになった。これに対して、住民の強い要求により、世銀の説明責任を審査する「Inspection Panel(IP)」が、社会的、文化的、環境的な影響について、審査をすることになった。10月末には、IPの報告書が出ることになっている。
4.ブラジルのダム建設プロジェクトへのIFCの融資
IFCは、ブラジルのアマゾン川流域のTeles Piresダム建設に融資をした。ダム建設が、先住民が聖地としている地域に氾濫をもたらすとして、先住民が、すでに長いこと反対運動を展開してきた。しかし、2011年、IFCは、長い間の顧客である建設会社Construtora Noberto Odebrecht社に対して、5,000万ドルの融資を決定した。同社は、Teles Piresだけでなく、南米各地でダム建設を行っている。