2008年月2日
北沢洋子

1)トーゴの債務帳消し

 7月12日、パリクラブはトーゴの債務3億4,700万ドルを帳消しにすることを決定した。同時に、残りの債務について、2011年まで返済をモラトリアム(猶予)することにした。
 パリクラブとは、途上国の債務の中で2国間分を処理する債権国のクラブである。パリクラブ側はトーゴの債務返済をモラトリアムにした「主な理由は食糧危機である」と言っている。

2)ハイチの債務を帳消しせよ

 ERODADなどヨーロッパのNGO40団体が、7月15~17日に開催されたEU議会開発委員会とEU開発相に対して、「ハイチの債務帳消し」を要求した。
 これは、先にスイス政府がハイチの元デュバリエ・ファミリーの資産をその正当な出所が解明されるまで凍結することを決定したこと、また米議会が財務長官に対して、世銀がハイチの債務を帳消しするよう、その影響力を行使するよう求める決議を行ったことなどを挙げて、今こそ、ヨーロッパ各国政府がハイチの2国間債務を帳消しし、さらにハイチのIMFや世銀の多国間債務を帳消しにするよう影響力を行使するよう要求した。

3)国連開発協力フォーラム

 今年1月以来、「国連開発協力フォーラム」の創設についての準備会議が開かれてきた。その結果、初の会合が、7月の第1週、ニューヨークで開催された。
これに出席したEURODADのNuria Molinaは、国連開発協力フォーラムをもってこれまでの先進国クラブと言われてきたOECDの開発援助委員会(DAC)に代えることになるべきだと報告している。

4)気候変動部門へのドナーの分散化批判

 Heinrich Boll FoundationとWorld Wild Fund (WWF) は共同で気候変動資金について、報告書を発表した。
 それによれば、これまで1年半の間に、途上国に対する気候変動に関する新たな資金拠出メカニズムがあらたに14機関も創設されたという。気候変動に関する関心がグローバルに起こっているのは良い傾向であるにしても、このようなドナーのラッシュがファンドの重複を生み、より大きな戦略の策定を妨害することになる。
 また、報告書は、このようなファンドの設置ラッシュは、これまで気候変動に関連した苦しい経験やベスト・プラクティスが生かされないという危険があると指摘している。

5)今年12月はじめ、湾岸のドーハで国連開発資金会議のレビュー会議が開催されることになっている。

 準備は順調に進行しており、近く、「アウトカム・ドキュメント」の第1回草稿が国連総会議長に提出されるだろう。したがって、来る9月は重要な月になるだろう。
 EURODADは、「資金の国外逃亡」と「貸し手の責任」について、担当大臣にロビーするよう各国のNGOに呼びかけている。

6)「新しいローンは答えではない」

 洞爺湖サミットのG8声明に対して、世界中のジュビリー(債務帳消し)は、「G8首脳には食糧危機と気候変動の責任がある」と非難している。
 またジュビリーは、食糧の値上がりと温暖化を解決するために新しいローンを拠出して、新しい債務を作り出すのではなく、むしろ食糧危機の最大の犠牲国の債務を帳消しにすることを呼びかけている。
 洞爺湖サミットの最大の課題は食糧危機と気候変動という2つのテーマであった。これにたいして、G8は新しいローンを拠出することで応えた。
 世銀は、2つの気候投資ファンドの追認に狂奔した。この2つは、ともに、貧しい国が“クリーンな”テクノロジイを摂取し、気候変動の影響を軽減することが出来るように資金を提供するファンドである。2つのファンドともに、大部分がローンで成り立っている。
 一方、世銀は食糧危機に対処するために12億ドルの基金を設けた。その中の10億ドル分は新しいローンである。これは、今日の危機を救いながら、一方で明日には債務危機という新しい危機を生み出す。

 ジュビリーは、
(1) 気候変動につながるプロジェクト融資や政策を止めろ
(2) 食糧危機を引き起こす政策を止めろ
(3) 融資や債務帳消しに際して貧しい国に経済諸条件を課すことを止めろ
(4) G8が貧しい国に負っているエコロジカルな債務を賠償せよ
などを要求している。