2008年5月21日
北沢洋子

 最近、IMF、世銀が重債務貧困国に加えた旧ソ連の中央アジア共和国の1つであるタジキスタンは、1997年に終わった内戦以来、最も厳しい経済危機にある。そして、これが社会危機を誘発している。
 すでに中央アジアの中でタジキスタンは最も貧しい国で、しかも民主化が最も遅れている国あったが、厳冬と政府の重債務がさらに状況を悪化させた。
 タジキスタンは綿花の産出国である。社会主義時代は国営部門であった綿花産業は、IMFの民営化、自由化政策によって、2003年、赤字だらけの国営銀行Agroinvestを民営化して、新たに民間会社Creditinvest社が設立された。
最近、このCreditinvest社の経理に大きな不正が発見された。このことは、タジキスタン経済危機に最後の一撃になった。
 IMFをはじめとする国際金融機関は、どうして債務不履行が起こったのか、そして誰を責めるべきか、長丁場の議論を続けているうちに、さらに事態を悪化させてしまった。
 昨冬は過去25年以来最も厳しいものであったが、これが人道的な危機をもたらした。タジク人たちは、寒い冬と大雪のため、食糧にありつけず、さらに電力不足を引き起こした。
 国連は人道的な支援を呼びかけた。そして、英国、イラン、スペインなどがこれに応じた。
 人道的な危機によって、タジキスタンの対外債務はさらに29%増え、総額12億ドルに達した。この数字はタジキスタンのGDPの3分の1にあたる。昨年、タジキスタンはわずか4,400万ドルしか返済できなかった。タジキスタンの対外債務は、すでに持続不可能になっており、経済を脅かしている。
 タジキスタンの経済は綿花に依存している。悪天候に見舞われたため、収穫は見込めない。
 Creditinvest社は主として綿花生産者に融資をする民間銀行である。アジア開発銀行によれば、Creditinvest社は海外から資金を集め、国内の綿花栽培農民に融資するトンネルの役をはたしている、と言う。そしてアジア開銀の独立の調査の結果、経理の穴が見つかった。これまで、IMFはCreditinvest社の会計監査をPricewaterhouse Coopersに任せてきたのだが、どうやら経理の穴を見過ごしていたらしい。
 IMFは、タジキスタンの経済悪化にあわてて、タジキスタン政府に対して、今年4,700万ドルの債務返済を行なうよう要請した。しかし、昨年タジキスタンは4,400万ドルを債務返済するのにやっとであったことを考えると、これはとうてい無理な話である。
 タジキスタンの国内法では、土地を担保にして、借りることが出来ないことになっている。そこでCreditinvest社の融資は難しいことになる。
 タジク中央銀行は、5億ドルの民間債務を持っているのだが、これは全対外債務の40%を占めている。中央銀行の罪は重い。
 今年の綿花の生産高は減ると見込まれる。なぜなら、綿花栽培農民は個人的に債務を抱えており、良い綿花の種や肥料を買い、それに灌漑を修理することなどが出来ない。
 Creditinvest社の経理の穴は3億3,000万ドルにのぼると見られる。現在、IMF、世銀、タジク中央銀行が調査中である。