2012年12月
北沢洋子
さる10月2日以来、アルゼンチン海軍のフリゲート艦「リバティ」号がアフリカのガーナの港で差し押さえられた。
これは、その前日、ニューヨーク州裁判所の判事が、「アルゼンチンは、現在の国債の所有者であるはげたかファンドに額面通り全額支払え」という判決を下したことに基づく行為であった。さらに、判決はアルゼンチンが2005年と2010年に「構造調整を行ったことに関係ない」となっていた。
これはひどい判決だ。この判決は、世界の注目を浴びた。なぜなら「債務と構造調整」については、今日では、南も北も関係なく訪れる問題だからだ。
12月15日に次の利子の支払いをしないならば、アルゼンチンは理論的には「デフォールト(支払不履行)」になる。もし判決に従って利子を払えば、それは、ヘッジファンドに巨額の儲けをもたらす。そのためヘッジファンド側は判事に猛烈な圧力をかけたのであった。
はげたかファンドとは、アルゼンチン政府の国債の所有者からほとんどタダに等しい額で買い取り、ニューヨークやロンドンのような債権者寄りの判決を下す裁判所に訴え、額面通りに債務者に支払わせる。その悪どいやり方から「はげたか」と呼ばれる。
ジュビリー・サウスは、ニューヨークの判決と、「リバティ」号の差し押さえに対して、アルゼンチンが「汚い債務」を返済するのは「不法」だと言っている。なぜなら、アルゼンチンの債務の大部分は、独裁政権下のものだからだ。また債務返済に関しては、「世界人権宣言」に基づいて、不法な債務の支払いは、アルゼンチンの人びとを困窮に追いやることになるからだ、と言っている。最近、国連では、「債務と人権に関する要綱」を採択した。ここでは、国際的債務に関して、国家、多国間機関、民間企業などすべてのアクターは人権を尊重しなければならないと、記されている。