2013年1月1日
北沢洋子
ワシントンにあるNGOのシンクタンク「国際政策センター(IPC)」の「グローバル金融インテグリティ(GFI)チーム」は、昨年12月17日、『途上国からの不正な資本流出の調査(2001~2010)』と題する報告書を発表した。「途上国は、2010年の1年間で、1兆ドルを失った。それは、腐敗、脱税などの手段、それに現金取引での流出などがその理由である」と述べた。
IPCはこの調査に約6年間を費やしてきた。その結果、グローバルな金融資本の不正行為は、政府やNGOの努力にもかかわらず、過去10年間、増加し続けた。
IPCは、IMFや世銀の資料を駆使して、途上国は、金融資本の不正な資本流出によって、2010年1年間に、8、590億ドルを失ったことを突き止めた。この額はこの1年間に途上国が北から受け取ったODAの10倍に相当する。2010年には、途上国は、ODAとして880億ドルを受け取った。
つまり途上国は、ODA1ドルと引き換えに、不正な金融操作によって、10ドルを失ったことになる。そして、この不正な資本流出は過小評価されている。たとえば、これには、現金での流出は含まれていない。それを含めると、途上国からの流出は1兆1,400億ドルに上る。
IPCの計算は控え目である。たとえば、これには貿易上の価格操作がある。さらに麻薬取引、人身売買などは現金取引で、正規の為替取引には入っていない。
たとえば、貿易での不正な価格操作については、途上国の輸出業者が200万ドルの商品を先進国の業者に売ったとする。しかし、買値は150万ドルになっている。ここでは輸出業者は、差額の50万ドルは、第3国の銀行口座に振り込むように言う。これは、税金を逃れるためだ。同じように、先進国の輸入業者は、逆に価格を高く操作する。それで得た分は海外の銀行口座に送られる。
また不正な取引の範疇に、賄賂、リベート、あるいは公然とした盗みなどの腐敗が含まれる。
資本流出によって損失を受けた国の第1位は中国である。2001年以来、中国は平均して年間2,740億ドル、10年間で2兆7,400万ドルの不正流出を記録している。2010年には、1年間で4,203億6,000万ドルに上る。
中国の後に、メキシコ、マレーシア、サウジアラビア、ロシア、イラク、ナイジェリア、コスタリカ、フィリピン、タイなどが続いている。たとえば、メキシコの年間平均損失額は476億ドルだが、2010年には1年間だけで512億ドルに上っている。途上国の不正な資本流出の中で、アジアは61%を占めている。
一方、年間の伸び率では、アジアは8%であるが、中東・北アフリカでは、年間26.3%の伸び率を記録している。ラテンアメリカ・カリブ海は、年間2.65%と低い。
これで見るところ、中所得国と高所得国が、不正な資本流出の犠牲になっていることがわかる。そして、腐敗度も高く、年増加率も高い。