2013年7月29日
北沢洋子

パキスタンでは、今年5月、総選挙が行われて、第2次シャリフ政権が発足した。民主的に選ばれた新政権は、発足早々、財政危機に見舞われた。その最大の理由は、対外債務が急増したことと債務に付属しているIMFの厳しい条件にある。

パキスタンの債務総額は580億ドルに上り、2008年以降、2倍に急増した。その債務返済額は毎年60億ドルに上る。これは年間の輸出総額の20%を占める。そして、医療と教育予算額の50%である。

英国の「ジュビリー債務キャンペーン(JDC)」と「イスラム救済」が共同で調査した結果、パキスタンの債務には、正当性に問題があるとして、「直ちに返済を凍結し、返済すべき債務と、帳消しにすべき債務を監査するべき」だと要求している。パキスタン政府は債務返済のために、貧困根絶と政権の安定化をはかることが出来ない。

パキスタンの債務の大部分は、不必要で、破壊的な灌漑プロジェクト、独裁者にてこ入れし、あるいは、自然災害を口実にして、融資を受け取るなど、人びとには何の恩恵がない。そして、IMFなどの融資は、民主主義を崩壊させる条件が付いている。パキスタンには、自身の資源と資金でもって、平等で、バランスのとれた、安定した国家を建設する力を持っている。

NGOの「イスラム救済」のパキスタン代表Fayez Ahmad氏によれば、「パキスタンでは5,000万人の人びとが貧困以下の生活を強いられている。にもかかわらず、貧困を根絶し、ミレニアム開発ゴール(MDG)を達することが出来ない。パキスタンの経済は、季節的な洪水、テロとの闘い、債務返済などの支出のために、マイナス成長を記録している。

パキスタンの不当な債務の原因は;

1.世銀が融資した灌漑プロジェクト。これは完成しなかっただけでなく、環境を破壊し、地域のコミュニティを苦しめ、さらに世銀自体の安全政策に違反している。しかし、これまでに、すでに4,200万ドルが返済されたが、その中の3,400万ドルは、利子分である。まだ2億3,100万ドルの債務が残っている。

2.テコ入れされた軍事政権とは、ムシャラク将軍(2000~2008)とZia ul-Haq将軍(1978~1988)の時代である。

3.パキスタンはIMFの救済融資を最も長く受けた国である。それは1971年から2010年に及び、厳しい条件に晒された。その1つに、税改革だが、最も貧しい層は7%の増税、金持ちは15%の減税となった。

4.パキスタンは、2007年のサイクロン、2010年の洪水など自然災害には、贈与であるべきところをローンで受け取った。

5.パキスタン政府はテロとの戦いに6,800~8,000万ドルを使った。

「JDC」と「イスラム救済」はパキスタンの債務について監査すること、債務返済を凍結すること、不正な債務を帳消しにすること、「累進課税」を実施すること、などを要求している。