2013年7月11日
北沢洋子
IFC(国際金融公社)は、世銀グループに属し、民間セクターの途上国投資に融資する機関である。この度、IFCは、カンボジア、ラオス、ホンデュラスなどでの民間企業による土地収奪に融資をしていることが、英国の「ジュビリー債務キャンペーン(JDC)」によって暴露された。
今年5月半ば、IFCは、ワシントンで、第4回「グローバル機関投資家会議(GOEC)」を開催した。この会議を主催した世銀のキム総裁は、機関投資家による途上国への投資を承認した。キム総裁は「機関投資家による新興国投資を促進すれば、貧困根絶と等分な繁栄を実現できるだろう」とのべた。
キム総裁は、金融資本による投資にまつわる社会、環境面のリスクについて、全く言及しなかった。しかし、これについては、IFCは、7月の理事会までに調査レポートと行動計画を提出することになっている。
5月はじめ、英国のNGO「Global Witness」のRubber Barons が、ベトナムでの土地収奪にIFCの融資が使われていること、またカンボジアとラオスでは不法な森林伐採にIFCが融資していることを暴露し、IFCの融資について調査することを要求した。
Baronsによれば、2010年以降、ベトナムのGian Anh Gis Lai(HAGL)の子会社と、ベトナムゴム園グループが、カンボジアとラオスでゴムのプランテーション用に広大な土地を買い占めた。これは、現地のコミュニティと環境に破壊的な影響をおよぼしている。買い占めた土地はすでにゴム園になっており、立ち退かされた住民の生活は困窮を極めている。そして、ベトナム資本が所有している土地は、カンボジアの土地所有制限法をはるかに超えている。
IFCは、すでに2002年に、Dragon Capitalグループという機関投資家に間接的に融資したと疑われた。のち、IFCはDragon Capitalが所有する「ベトナム企業投資会社(VEIL)」に直接融資した。
このような、ベトナム資本に対するIFCの融資がリスク管理を怠っていると疑われている。というのは、2011年、HAGLがロンドンに株式を上場したとき、ラオス、カンボジアでのビジネスが、現地政府の承認、許可を受けていないことが判明した。またゴム園の事業も現地の法律や規制に従っていないことも判明した。HAGLは、6月はじめ、Global Witness に対して、「不法行為はない」と反論し、文書で問題に対処するべき行動計画を作成すると約束した。
一方、IFCは、5月に、Dragon Capital ファンドのマネージャーに対して、環境、社会的な配慮をするように、伝えると約束した。
ホンデュラスに関しては、IFCは、商業銀行のFICISHAに融資した。これは、現地住民が強く反対している水力発電用ダム建設プロジェクトであった。
2009年、ホンデュラスでは軍事クーデターが起こり、憲法が凍結され、同時に、民間企業が水道事業に参入できる(第1次民営化)法が制定された。
2010年9月 、クーデター以後の政府は、透明性、合法性のある現地住民との交渉なしに、水力発電用ダム41ヵ所の建設許可を、Desarrollos Energ S.A.に与えた。その中には、悪名高い22メガワットのAgua Zarcaダムも入っている。ホンデュラスの先住民のネットワークCOPINHは、このダム建設に融資しているのはFICOSHA銀行だと言っている。このFICOSHAは、2011年、IFCから7,000万ドルの融資を受けている。COPINHによれば、Lenca族住民が、Agua Zarcaダム建設を阻止するために、ホンデュラス北東部Santa Barbara州を流れるGualcarque川に通じる道路を占拠した。このダム建設は、すでに住民投票で拒否されている。
IFCにはCompliance Adviser/Ombusman(CAO)という監査機関であるが、この間、全く機能していない。