2013年7月11日
北沢洋子
今年5月25日、ブラジル政府は、アフリカ12カ国の債務9億ドルを帳消しにするために、再交渉すると発表した。アフリカ12カ国とは、コンゴ(ブラザビル)、タンザニア、ザンビア、セネガル、象牙海岸、民主コンゴ、ガボン、ギニア、モーリタニア、サオトーメ・プリンシペ、スーダン、ギニア・ビサウなどである。ブラジルの憲法はこのような案件は上院の承認を必要としている。したがって、ルセフ大統領は上院に「大統領のメッセージ」の形で、この中の9カ国との債務についての再交渉の内容を伝えた。
「メッセージ」によれば、ブラジルが保有している債務の多くは、「輸出保険」によるものである。つまり、ブラジルは、アフリカにブラジル製品やサービスを輸出する際、「輸出保険」を提供する。同時に、このような債務国との再交渉が、ブラジルへの債務返済を促し、新たなブラジル―アフリカ関係をスタートさせるきっかけとなることを目論んでいる。
したがって、この政策は、「帳消し」ではなく、「再交渉」を意味している。
BBCテレビは、ブラジル企業は、これらアフリカの国ぐにで、「天然資源を買い漁っており、また、ブラジル製品がアフリカ市場に溢れていると、非難されている。これは、協力と平等の精神で、互恵関係をめざしているというブラジル政府の言い分と矛盾する」と報じた。
その中の1つの例として、今年5月、モザンビークでは、数百人の労働者がブラジル企業Vale社所有の炭鉱の敷地に入ることを阻止されるという事件が起こった。彼らは炭鉱が運転を開始した際、ここに住んでいた住民であり、「移住先の土地は荒地で、何も栽培出来ないので、食べものにも困っている」と言っている。Vale社とモザンビーク政府は、改善に努力すると約束した。
Vale社が、同様な事件をギニアでも起こしている。Vale 社は政府から鉄鉱山の開発の権利を得た。7月はじめ、住民がVale 社のテントを占拠し、同社が地元住民を雇用するとした約束を履行していないと非難した。ギニア政府はVale社の味方をして、政府軍が発砲して、6人が死亡した。Vale 社は事件への関与を否定している。
アンゴラでも、ブラジルの建設会社Odebrecht社が同様な問題を起こしている。同社は地元政治家との癒着を非難されている。
したがって、ブラジル政府の債務帳消しという温情的な政策について、ブラジル企業が、アフリカの天然資源を収奪している実態を十分把握する必要がある。