2014年3月30日
北沢洋子
金融危機により、『トロイカ』の融資を受けたギリシャの実情は、改革どころか、悪化の道をたどっている。
失業率は、27.8%、青年の失業率は57.9%にのぼる。
政府の債務は、GDPの170%に上る。危機が始まって以来、不動産の価値は32%も下っている。
ギリシャのユーロ圏からの離脱、すなわちGrexitの噂は依然として、広がっている。ちなみに、Grexit とは、ギリシャのGとExitを加えた造語である。そして、今年には、大きな社会不安が起こると予測される。にもかかわらず、EUのエリートたちは、のんきにギリシャがEUの議長国になったことを祝っている。
最近ギリシャでは、2つの不動産税法が制定された。その1つは固定資産税であり、もう1つは、住人を家から追放する差し押さえの法律である。
第1の新不動産税法について、農民たちが、農地の不動産税額が上がるのではないかと恐れ、首都アテネに集まって、議会に抗議した。
第2の法律は非常に評判が悪い。一応、家屋の値段が20万ユーロ以下で、低所得所帯の場合は、モラトリアムを受けることが出来ることになっている。とはいえ、20万ユーロ以上の家屋が差し押さえになると、住人は追い立てられる。
与党の1人が党の決議に背いで、反対票を投じ、党から追放になった。現在、ギリシャ議会では、与党は300議席の中で、多数派といっても153議席という僅かな多数派である。
医療部門では、人びとの圧力は大きな成果が上がった。政府は、新たに国立病院の医療費を課そうとしたが、反対に会い、撤回した。代わりの財源として、たばこに増税した。ギリシャでは、エネルギー部門の税金が高い。そのため、貧しい人びとは森の木切れを燃やしている。これは、環境破壊と大気汚染につながる。
ギリシャ政治の最大の病根は汚職である。これには、かなりの多くの政治家、企業、高級官僚、軍人が絡んでいる。また、German Atlas(ドイツの建設企業)、Rheinmetal(ドイツの軍需企業)、Wagman(米国の建設企業)などの外国企業も汚職がらみである。またスエーデン、ロシアの企業も、最近、武器輸入に関係して、リベートをとったと非難を受けている。
ギリシャに支店を置くスイスの銀行は、資金洗浄にかかわったと非難されている。アテネのHellenic Postbankが5億ユーロを資金洗浄したことが発覚した。25人が逮捕された。
これらのことは、民間の献身的な調査によって、明らかにされた。だが、彼らの仕事の環境は劣悪である。ドイツの日刊紙『Suddeutsche Zeitung』によれば、彼らはほとんどオフイスを持たず、家で仕事をしている。またパソコンも自前のものをつかっている。
ギリシャの日刊紙『TO VIMA』のアンケート調査では、ギリシャ人の55%が国を出たいと答えた。