2014年3月31日
北沢洋子

1.銀行の債務を政府債務に肩代わり

 2013年、スペイン経済は悪化した。GDPは、年率1.3%までに減速した。失業率は26.4%を記録した。財政赤字はGDPの6.7%となり、政府債務はGDPの100%にのぼった。
 スペインの経済危機は2012年にはじまった。それは、2003年以降の不動産バブルが崩壊したためであった。
しかし、この危機が始まる前は、スペインの政府セクターは健全であった。例えば、国営企業は黒字で、政府債務もGDPの40%に留まっていた。しかし、民間セクターは危機にあり、当時すでに銀行の債務はGDPの400%に達していた。
 不動産バブルが崩壊すると、民間銀行は債務返済不可能(デフォールト)とになった。ほとんどの銀行が一夜にして破産状態に陥ったのであった。しかし、現実に破産を免れたのは、銀行がバランスシートをごまかしたことによる。例えば、銀行の資産は、不動産市場の実際の評価を反映せず、高い価格をつけた。こうして、銀行は1,500億ユーロにのぼった赤字を粉飾した。
 銀行を援助した政府の政策は、「繰り延べ税金資産(DTAs)」の取り扱いまたは、保証を変更したことであった。スペイン政府は銀行のDTAsの保証人となることにより、損失を引き受けた。政府の救済資金は、銀行の資産に組み込まれた。今年末には、銀行はそのバランスシートに新たに300億ユーロを資産に加えることが出来る。
 その結果、その分だけ、そっくりスペイン政府の債務は増大した。そして、銀行は、これまでになく、健全だということになっている。

2.腐敗の構造

 スペインにはびこる腐敗は、銀行家、政治家、労組リーダー、王室を巻き込んでいる。最近発覚したスキャンダルは、Caja Madrid銀行(現在は、Bankia銀行)の前頭取で、ネポティズム(縁故主義)、経営の失敗、過度な浪費などが非難された。実際、彼の経営は、バランスシートに大穴をあけ、それが、ついに、スペイン全体の銀行システムを危険に晒したのであった。あわててスペイン政府はCaja Madrid の救済にのりだした。つまり、これによって、政府は財政支出を削減した。ということは、市民が支払う税金で賄われたのであった。
市民コレクティブがさまざまな形で、この腐敗と闘っている。たとえば、銀行を告訴する「法的な市民イニシャティブ」の結成などが挙げられる。

3.民営化

 市民の闘いでは、もう1つ民営化に対する闘いが挙げられる。最近、裁判所が、マドリッド市内の6つの病院の民営化を凍結する判決を下した。これには市民が民営化と闘っている中で、マドリッドの医師組合(AFEM)が告訴した。

 以上、DebtNet通信No.15~18、キプロス、ギリシャ、ポルトガル、スペインの4つの記事は、ブルセルbに本拠を置くCADTM(第三世界の債務帳消し委員会)のニュース記事を参考にした。