2011年8月
北沢洋子
1. 大統領選以後の内戦
2010年10月31日に大統領選挙が行なわれ、ワタラ野党候補が勝利した。しかし、現職のバグボ候補はこれを認めず、首都アビジャンに2人の大統領が出現することになった。
国連、アフリカ連合(AU)、西アフリカ経済共同体(ECOWAS)、EUなどがワタラ大統領を認めた。今年4月4日、ついに国連PKOが派遣された。4月11日、すでに派兵されていたフランス軍がバグボを逮捕して、内戦は終了した。
2. コートジボアールの債務
2010年7月18日、IMFはコートジボアールに対して新規の融資を決定した。つまり、コートジボアールは、この新規の融資は旧い債務の返済に充てられる。これは、IMFが決めたルールに違反している。
そもそも、IMF.・世銀が「HIPCイニシアティブ」の対象国として自らが決めたのは42カ国であったが、さまざまな難癖をつけて例外を設け、1996年の「HIPCイニシアティブ」発足以来、救済を受けたのは32カ国にとどまっている。
「HIPCイニシアティブ」による債務帳消しを受けるためには、債務国はIMFが課する「構造調整プログラム(SAP)」を計6年間実行し、「完了点」に達したというお墨付きをもらわねばならない。
コートジボアールは、2010年末の大統領選後の紛争が始まるまで、「HIPCイニシアティブ」にもとづいて、SAPを忠実に執行してきた。紛争がはじまるや否や、IMF、世銀は、コートジボアールに対する「HIPCイニシアティブ」の適応を、停止してしまった。
これに先立つ、2009年、IMF・世銀は、コートジボアールが「完了点」に達した場合、90億ドルの債務が40億ドルに減るだろうという計算をしていた。つまり、削減後もコートジボアールは、予算の10~20%を債務返済に充てなければならない。これは、保健衛生、教育など貧困根絶に必要な予算を圧迫する。
今年5月、IMFはコートジボアールに調査団を送り、「今年の債務返済は不可能である」と結論づけた。そして、債務削減するのではなく、新規に1億3,000万ドルを融資することを決めた。IMF理事会(日本は米国に次いで大きな投票権を持っている)は、この融資は「(Rapid Credit Facility)」によるものとした。その結果、この新規融資分はこれまでの債務返済に充てられ、さらに「HIPCイニシアティブ」による「完了点」に達したとしても、この分は帳消しの対象にならない、とした。
このほか、コートジボアールは英国の「輸出信用保証局(ECGO)」から2,100万ドルを借りている。この分は、「HIPCイニシアティブ」の「完了点」時に帳消しになる。
コートジボアールの対外債務は、2009年にIMFが計算したものよりはるかに上回っている。
これは、その後の予想しなかった政治的紛争、それに引き続いた「HIPCイニシアティブ」の適応停止、さらに今回のIMFの新規融資、英国のECGOによる債務などから生じたものである。
この債務が、ひ弱な経済の発展、山済みの社会問題の解決、貧困根絶の最大の妨げになっている。