2014年7月19日
北沢洋子

1.史上最大の港湾スト

 チームスターズ(Teamsters)はトラック運転手の労働組合で、全米の労組の中で最も歴史が古く、規模が大きく、戦闘的なことで知られる。
 7月14日以来、ロスサンゼルスとロングビーチのチームスターズ支部の港湾トラック運転手120人がストに突入した。その結果、カルフォルニア州最大のロサンゼルス港をはじめとする計3ヵ所の港が、歴史上はじめて完全閉鎖に追い込まれた。彼らがボイコットした港湾会社は、「Pac 9 運送」、「Green Fleetサービス」、「トータル運動サービス(TTSI)」の3社であった。さらに「エバグリーン・コンテナ・ターミナル」がトラック業者3社に対して、「労使紛争が解決されるまでドックに来るのは好ましくない」と通達したと言われる。
 チームスターズ労組のスポークスマンは、「経営者側が、港を閉鎖した。ということは、これらの会社のトラック運転手は仕事がなくなった。こんなことは、はじめてのことだ」と語った。
 カルフォルニア州の港湾のチームスターズがこの1年間にストをしたのは、これが初めてではない。これは4度目のことだった。しかし、これまでは、せいぜい1~2日で終わっている。たとえば、昨年11月、「Pac9」社のストに参加したのは、労働者150人の中のわずか15人であった。
 ストに参加しなかった労働者は、彼らのことを「夢想主義者だ」と呼んだ。しかし、今回、ターミナル3ヵ所が閉鎖されたので、夢想は現実になった。

2.不法な懲罰

 通常、アジアからの商品を積んだ船は港に停泊する。そこでのトラック運転手の仕事は、そのコンテナをSkechers Shoes 、Coatco 、Forever 21などの大規模小売り業者の倉庫に運ぶことだ。通常、港では、12,000人が働いている。
 今回のストは、報復など不法な労働弾圧に対する抗議ではじまった。たとえば、Paz氏は、TTSIで働いていたが、賃金泥棒騒ぎのあとで、解雇された。彼は、「私が証言した時、経営者が部屋の中にいた。そして間もなく、私は解雇された」と証言した。
 カルフォルニアのストと同じ日、ジョージア州の港でもトラック運転手のストが始まった。しかし、すぐにやめてしまった。彼らの要求は、「単純契約者の資格でなく、正規の労働者として扱われたい」と言うものだった
 カルフォルニアのトラック運転手も同じ要求をしていたが、いくらかの成功を収めていた。昨年11月、Pac3でのストライキの時点では、「単純契約者」に留まっていた。そして、チームスター労組が、「全国労働関係局」に提訴すると、経営者側は、即座に要求を飲んだ。
 そして、会社は「単純契約者でないので、労組を結成する権利がある」という張り紙を出した。にもかかわらず、Paz 9 は、労組を組織した労働者を仕事が少ない部署に配転するなどの懲罰を止めない。
 またGreen Fleetは、労働法規に書いてあるすべての規則を破っている。たとえば、危険なトラックを運転させるなどをしている。そして、仕事が無くなると、運転手たちを家に送り返し、仕事やらせない。このような懲罰もある。

3.食べていけない給料

  このストを組織したJane Slaughterは昨年、運転手たちは、「もっと生活できる賃金と労働条件を、自身で決定することが出来るようになることを望んでいた。
 ロサンゼルスやロングビーチなどの巨大な港の労働者の多くは、移民労働者である。ほとんどが、会社からトラックを借りており、その返済を給料から差し引かれている。さらに、トラックのパーキング料、ディーゼル・オイル代、保険料などが差し引かれる。この中には、積荷に対する保険まで入っている。
 スト中のDaniel Linaresは、「私は、週に五日、それも、早朝から、夕方4~5時まで働いて、前の金曜日にもらった給料は200ドルでしかなかった。時々週給400~500ドルになることもある。それでもトラックの運転者の労働は厳しい」、「それは惨めな給料だ。生活することが出来ない。一方では、会社は数百万ドルの利潤を挙げている」と語った。