2008年1月3日
北沢洋子
世銀は、昨年末、重債務貧困国(HIPCs)イニシアティブ(96年発足)、多国間債務救済(MDRI)イニシアティブ(2006年発足)による債務帳消しの実態についての報告書を発表した。その内容は、以下の通り。
2つのイニシアティブによって債務帳消しを受けた国は31カ国、それに加えて、今後10カ国が潜在的に債務帳消しの対象となる。
2006年末で、すべての債権者が帳消しに参加したとして、31カ国の債務帳消しの総額は、実体額で690億ドルに上る。うち、世銀の帳消し分は、260億ドルである。HIPCイニシアティブによる帳消し額は110億ドル、MDRIによるものは150億ドルである。さらにこれから帳消分41カ国に対する世銀の帳消し総額は310億ドルに上ると予測される。
これから帳消しを受ける、つまり決定点に達して、完了点に向かっている10カ国の債務の返済額も減少している。2000年の1人当りの額が9.2ドルであったのが、2006年には4.5ドルに減っている。これは50%減である。
債務返済額が減っていることは、一方では保健、農村のインフラ建設、教育などの予算が増えている。これら10カ国では、これら民生予算が、2000年にはGDPの7%であったものが、2006年には9%に増えている。また貧困削減予算も、2000年には10カ国の総額が170億ドルであったものが、2006年には170億ドルに増えている。
これら民生予算額は、債務返済額の5倍である。
すでに100%債務帳消しを受けた重債務貧困国は、ベニン、ブルキナファッソ、カメルーン、エチオピア、ガーナ、マダガスカル、マラウイ、マリ、モーリタニア、モザンビーク、ニジェール、ルアンダ、サントメ・プリシペ、セネガル、シエラレオン、タンザニア、ウガンダ、ザンビア(アフリカ18カ国)、ボリビア、ガイアナ、ホンデュラス、ニカラグア(ラテンアメリカ4カ国)の22カ国である。
さらに、決定点に達して部分的に帳消しを受けた国は、ブルンディ、チャド、民主コンゴ、コンゴ共和国、ガンビア、ギニア、ギニア・ビサオ(アフリカ7カ国)、アフガニスタン、ハイチの9カ国である。
、将来帳消しの対象国となる(つまり決定点に達していない国)のは、中央アフリカ、コモロ、象牙海岸、エリトリア、キルギス、リベリア、ネパール、ソマリア、スーダン、トーゴの10カ国である。
昨年11月、EURODADは、重債務貧困国の中で、今年中に完了点に達して債務帳消しを受ける国について報告した。
ガンビアは2007年末
ブルンディは2008年はじめ
チャドは2008年半ば
民主コンゴは2008年前半内
ハイチは2008年最後の四半期
ギニアは2008年末、
また今年中に決定点に達する国は、
中央アフリカは2007年第3四半期
リベリアは2007年第4四半期
象牙海岸は2008年半ば
コモロは2008年下半期
トーゴは2008年末
リベリアに関しては、ベルギー、ブラジル、インド、トルコ、インドネシアなどが、リベリアがHIPCsイニシアティブの対象国になることに反対している。ただし、ベルギーについては、政府の組閣が遅れているのが原因である。
2007年10月17~18日、ヨルダン政府とパリクラブ債権国のとの会議がパリで開かれた。ヨルダンは、パリクラブから、1994年、1997年、1999年、2002年と4度にわたって債務繰り延べを受けてきた。
パリクラブのヨルダンの債権国たちはヨルダン政府が債務を市場価格で買い戻すことに合意した。したがってヨルダンの債務総額は、2008年1月1日には25億ドルに上る。
具体的には、ヨルダンはそれぞれの債権国と個別に債務の買取について協議しなければならない。
昨年末、イタリア上院の対外関係委員会は「債務監査委員会」の設立を決議した。イタリア政府もこれに同意している。これは、2008年1月に発効する。
これは、貸し手の責任を明らかにするものである。
2007年に何が起こったのか。
(1) はげたかファンドについて
4月、はげたかファンドのDongegal Internationalがロンドンの法廷でザンビアの債務1,550万ドルについて勝訴した。これは2005年に帳消しになる民間債務であった。国際的なキャンペーンやメディアの力がなければ、被害はより大きかったであろう。
(2) 2007年中に債務帳消しを受けた国は3月、サオトーメ&プリンシペ、決定点に達したのがアフガニスタン、中央アフリカなどであった。
(3) 10月17日、国連などが主催する「貧困根絶ための国際デー」に人びとが一斉に立ち上がることで貧困根絶を訴える「スタンドアップ・スピークアウト」に110カ国、3,880万人が参加した。日本では5万人がこれに参加した。これはギネスブックの新記録を達成したことになった。
これは「グローバル債務ウイーク」の初日に当たった。これは貸し手責任を問うものと、不当な債務の帳消しを求めるものである。206年にノルウエイが不当な債務の帳消しに乗り出した。また21007年エクアドルが債務の監査を始めた。
一方世銀と国連はともに、「不当な債務」コンセプトを取り上げ、G8は「責任のある貸し手の憲章」作成に乗り出した。