2015年6月6日
北沢洋子
ウクライナは、現在、ほとんど破産状態にある。その中で最も打撃を受けているのは労働者である。労働者の多くは、賃金を受け取っていないか、たとえ受け取っていても、最低賃金をはるかに下回る“不法な”賃金である。経営者は、会社に残っているお金はすべて引き出しており、外国に送金するか、そう出来なくても、外貨に換えている。
賃金の未払いは、もっと拡大するだろう。ウクライナの対外債務は、100億ユーロに上り、債務返済不履行(デフォールト)の前夜にある。役人や経営者たちは、これを解決する意思など全くない。外国から借りられるところはもうとっくにない。為替レートは、急激に下落している。5月末、ウクライナ議会は、80億ドルの債務返済分を、東部の産業地域での戦闘の激化のために、軍事費に回すと、発表した。これは、外国の債権者、とくにIMFにとって、不利な出来事である。同時にウクライナの銀行、産業界は、これ以上、為替レートが下落する前に、そして、予測されている6~7月の国家破産の前に、ありったけのユーロ、ドルをかき集めている。
このような破産寸前の状態では、労働者の賃金の支払いはおろか、あらゆる請求書に対して支払うものはいない。労働者50万人の賃金未払い分は、80億Hryvnia(1Hryvniaは5.9円)に達している。5月27日、ウクライナ労働組合連合は内閣府の前で、ピケを張った。これは、6月3日、?日と、水曜日毎に予定されている。Serhiy Kondratiuk連合副会長は、「現在、最低賃金となっている1,218 UAHは、ウクライナ法律で定められている額の60%でしかない」と述べた。ウクライナの最低賃金は、社会政策省が認めている月3,500 HAHである。しかし、政府は連合の呼びかけているダイアローグを拒否している。
ウクライナの銀行預金は枯渇している。経済が破産した状態では、お金を払うことができるのは、アメリカ人かヨーロッパ人だけだ。つまり、経営者にとって、物を売って支払ってもらえるのは、外国人で、それも国外の口座に支払われる。ウクライナでは、外国資本による民営化と、資金の国外逃避は、同時に起こっている。破産した古い(国営)会社を買い取り、賃金の未払い分や債務を帳消しにする。つまり、再建された会社は労働者に対する賃金の債務を支払わないと、宣言する。これは、米国で会社が再建されたとき、労働者の年金基金を帳消しにするのと同じやり方である。これは、ウクライナ経済の救済であり、競争力を高めるためだと言う。